第173回 トロンボーンの左手 ~腕の使い方編~

前回の続きで、トロンボーンを持つ左手、腕編です。

こんにちは。
トロンボーン奏者でアレクサンダーテクニーク教師のかたさんです。

【曲げる関節を知る】

腕にある大きな関節は、手首、肘、肩関節の3つです。
今回は主に肘と肩関節について、楽器を持つ時に使える情報を書きますね。

まず肘関節ですが、楽器を持つ時に起こる動きは2つ。
屈曲と回内です。

屈曲は、いわゆる肘を曲げる動き。
回内というのは専門用語なのであまり知られていませんが、いわゆる「手首を回す」という動きです。

肘を曲げて掌を上に向けた状態から小指を軸に掌を体の内側方向に回転させる動き、これを回内と言います。
本をパタンと閉じる動きですね。
ちなみに逆を回外と言います。
手首を回す、掌を返すというのは肘関節の動きだったのですね。
だから「手首を回す」と言いうのは実際には出来ない動きで、間違った表現とも言えます。
だから本当に手首を回そうとしていたら、余計な力みとなります。

楽器に手を添える時、肘屈曲は当然ですが、すでに回内も起こっています。
ここでこの動きを手首や手の動きと認識していると、わずかですが手首下や前腕に力みが入るのが解りますか?
このわずかな力みが腕の疲労を促進してしまいます。
楽器に手を添える時にも、この動きがあるということを意識してみてください。

【肩関節の動き】

この関節は正確には肩甲上腕関節と言います。
字でお分かりのように、上腕骨は胴体にくっついているのではなく肩甲骨と関節を作っています。

そして肩甲骨は鎖骨とくっつき(肩鎖関節)、鎖骨は胸の骨とくっつく事で初めて胴体と繋がります。(胸鎖関節)

さてここで下の2つの画像を見てください。

これと・・・

これ

シャツがしわくちゃなのはご勘弁m(__)m
小さく前ならえの格好です。やってみてください。
どちらの方が楽ですか?
静止状態で分からなかったら、ジョギングする時のように腕を振るとわかりやすいです。
実際に部屋の中で軽く走ってみてください。

・・・・・(皆さん部屋の中をぐるぐるランニング中)・・・・・

さてどうですか?恐らく②の方が振りやすかったのではないでしょうか。

実際にランナーの腕を見てください。

高橋尚子さん

こちらはボルト選手とケンブリッジ飛鳥選手

長距離と短距離奏者両方の腕ですが、ね、腕は真っ直ぐ前ではなくやや内側に向かって振られていますよね。

手の方向がやや内側に向くのは、これは肘ではなくて肩関節の動きです。
回旋運動というやつで、内側に回旋するのを内旋と言います。

どうも人体の骨格は、腕がやや内側を向いている方が動きやすいみたいです。
というのは、肩甲上腕関節の肩甲骨側の関節面(関節窩:上腕骨とくっつく面)が真横ではなく少し前側を向いているからです。

肩甲骨は、背中で真横ではなく斜め前の方向性を持って肋骨の上に乗っています。

参照:野球ドットコムより

そのため、関節窩もやや斜め前に向き、くっつく上腕骨も斜め前向きで動きやすい状態となります。
だから腕は前で動かす方が動きやすい、そういう構造になっています。
腕が身体の横にあるから横で動くと思われがちですが、実際こうなんですね。

さっきの小さくまえならえやジョギングの振り、腕が真正面を向くのが自然に感じるようなら、それは普段から腕を後ろに引いている可能性があります。

気をつけの姿勢ですね。
この時、肩甲骨は背中の内側に寄りせられており、背中で真横に並びます。
そうすると肩甲骨関節窩は横を向くので、腕は前で働く機能を低下させます。

【トロンボーンを持つのに使う筋肉】

さて、トロンボーンの話に戻らなきゃね。

楽器を持つのに、先ず肘が曲がり、その後肩関節の動きで楽器を顔のところまで持ってきます。
トロンボーン、トランペット、フルートなども同じですね。
鎖骨より上に持ってくる必要があるこれらの楽器は、他の楽器以上に肩甲上腕関節の動きが特に必要です。

肘の屈曲でだいぶ持ちあがるのですが、足りない分肩関節の動きが必要です。
この肩関節の動きの方向を、先ほどのジョギングの腕の振りのような方向性を持つことを意識してみてください。

そして、その方向性を持って腕を持ち上げるのに重要な役割を持つのが大胸筋です。

トロンボーンを持つのに、意外に胸の筋肉の存在が認識されていません。
疲れてしまう前腕や手の方に意識行きがちですからね。

そして肩の筋肉(三角筋)も使いますが、これも前側の方です。
前にある楽器を身体の前で上に持ってくるのは、身体の前にある筋肉です。
バランスを取るために拮抗筋として後ろ側が使われることもありますが、これらはメインではありませんからね。

肩が凝ったり痛くなるのは、首に付け根や背中側でしょう。
胸筋が使われないと、楽器を持ち上げるのに首の付け根辺りや背中にある筋肉(僧帽筋)を使ってしまいます。
これが「肩を上げる」という事になり、これは不必要な力みに繋がるので「肩を上げるな」ということになるんです。
この力みは、人によっては首を楽器側にぎゅーっと窮屈そうに曲げてしまうことも起きます。

胸筋を使わない状態で僧帽筋も使わなければ、楽器は口のところまで持ち上がりません。
それでも楽器を吹こうと思ったら、顔を首のところから楽器に近づけないと、マウスピースと口が接しません。

これは想像できると思いますが、とてもしんどい姿勢なります。
なので単純に「肩を上げない」だけでは力みはとれず、楽器は楽に持てないのです。
この場合、胸筋を積極的に使ってあげる事が結果的に僧帽筋の余計な力みを取る(肩を上げて楽器を持つことがなくなる)ことになります。

腕の動かす方向と筋肉、参考にしてみてください。

明石市でのレッスンお申込みはこちら

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です