レガートがうまく出来ないという中学生トロンボーン奏者へのレッスンの模様です。
こんにちは!
トロンボーン奏者でアレクサンダーテクニーク教師のかたさんこと片山直樹です。
可
トロンボーンのレガート
トロンボーンで高等技術に当たるものにレガート奏法があります。
トロンボーンは、他の楽器と違い、スラーでもタンギングをします。
タンギングをしながらも滑らかに聞こえさせると言う奏法です。
何故かトロンボーンでは、スラーの表記の時、そうは言わずにレガートといいます。
なぜ英語のスラー(slur)とイタリア語のレガートと、語学的表現の区別がついたのか知りません。
知っている方、教えてください。
さて、今回はそのレガートがうまく出来ない中学生のレッスンのことです。
タンギングすると舌がグッと固まるような感じになり、レガートじゃなくなると言うことでした。
同倍音上と違う倍音間を行き来するレガートではリップスラーを使うという違いがあります。
今回は、同倍音上で音が降る時のレガートに関しての相談でした。
可
トロンボーンならではのレガートの練習方法
トロンボーンという楽器の特性でもあり、他の楽器にはない特徴を生かした練習方法にグリッサンドがあります。
タンギングをせずに第1ポジションからスライドを伸ばしていけば、音は繋がって下がっていきます。
これをレガートの練習として意識するには、音が同じ音量で繋がっていることが大切です。
これは息の問題ですね。
管が長くなるにつれて、息の出し方を変化してかなければなりません。
この練習は他の楽器にはないものなので、有効に使ってみると良いでしょう。
可
レガートタンギングを邪魔する何かがある
さて、その生徒にもグリッサンドをしてもらった後、スライドの動きにレガートタンギングを合わせてしてもらいました。
グリッサンドで音を下げた時はスムーズにいったのに、タンギングを加えるとどこか硬くなる変化が起きました。
硬くなっている場所は、主に首の後ろでした。
アレクサンダーテクニークにおいては、この首の固まりはしたい事を妨げるお邪魔虫です。
ここの指摘でもよかったのですが、私が見えたのはここだけではない何かの硬さでした。
そう思うと、首の固まりも結果なのかもと思えました。
かつてアレクサンダーが、姿勢でもっとも大きな変化をしたのは、脚の使い方を変えた時でした。
経験からくる推測を含めながらある場所を見てみると、ビンゴ!見事に固まっている場所がありました。
それは、左腕。
可
左腕の使い方がレガートタンギングに影響
左腕が楽器を支えるのに重要なのは言うまでもありません。
しかし、しっかりと固定されてしまっていては、様々な変化に対応できません。
今回は、スライドを伸ばしたり空気をより多く吐くと言う行為に対し、楽器がある一定の場所から動かなくなってしまっていたようです。
この生徒は、腕の固定により楽器が動けず、逆にアンブシュアーが安定しなくなっていました。
それがタンギングに影響していたようです。
もっと具体的にいうと、左腕の固定は、この生徒がここで吹くほど良いアンブシュアーの位置よりも下がっており、そのため頭をやや下に押し下げ首の固まりを生み、タンギング時に影響が出ていたようです。
「左腕、もっと使ってみて」
左腕の仕事が楽器を持つことだけになっていたので、演奏にもっと積極的に参加する事をあえてこの様な言葉で伝えたところ、音が変わりました。
タンギングのグッとなる感じもなくなり、滑らかなスライディングと音の繋がりになりました。
可
トロンボーンの構えでは、楽器を持つ左腕を「固める」という様な表現があります。
この腕を固定するという、まさに固定概念が音にも影響している場合とても多いです。
音のことではないですが、これは年齢を重ねると五十肩の原因にもなるかもしれません。
ちなみに私は痛めていますし、トロンボーン奏者で左の肩、腕、背中の痛みを持つ人は多いです。
アンブシュアーや呼吸、姿勢に合わせて腕が動けることを許してあげれば、将来的な痛み予防にもなるでしょう。
ご自身の体のためにも、「腕を固める」から卒業しましょう。