トロンボーン奏者でアレクサンダーテクニーク教師のかたさんです。
今日は練習における失敗の容認についてです。
このテーマは、私の師であるバジルさんも含め色んな人が書いてますが、それがモロに音に影響していた生徒のレッスンを例に書きます。
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【高音を出す時の恐怖】
先日レッスンした、フルートの女子中学生。
高い音が出ないという悩みで、その部分を吹いてもらいました。
ある音になると、確かに出し難そうだし、実際音もかすれ気味です。
身体も後ろ下方向に縮んでいます。
息もその音になると減っているようです。
ちょっと気になったことがあったので、あえて練習方法の提示をし、そこから情報を集めてみました。
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出にくいのは高いソの音だったので、その下のドからスラーで「ドレミファソ」と吹いてもらいました。
トロンボーンと違い他の楽器は、スラーの時タンギングしません。
しかしこの生徒は、ソの音の時にタンギングをします。
「最後のソまでスラーでやってみて」
何度か試したのですが、必ずタンギングをします。
「では、ファ→ソだけやってみよう」
それでもタンギングをしてしまいます。
思わずしているようです。
「ひょっとして、外れるのが怖い?」
「怖いです」
音を外す怖さが、息よりもタンギングで音を出させることになった結果でした。
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【失敗を許す】
練習において、失敗は当たり前のこと。
色々試していたら必ず起きるもの。
それを怖がってしまうと、「失敗しない吹き方」の練習になってしまいます。
これは、いい音やしたい音楽をするための練習ではありません。
外れるのを怖がるあまり、何とか音が当たるやり方をこの生徒は見つけたのです。
それが、先ほどの必ずタンギングして音を出すやり方。
それでも、レッスンに悩みとして持ってくるくらい確率低いのでしょう。
音を出すための要素に、タンギングが欠かせなくなっています。
「今は外していいからスラーで吹いてみよう」
毎回ワークショップをする時は、
「この空間は安全な場所です。皆さんが思ったこと、感じたことを言ってもらえれば、それは全て正解です。間違いなど一つもありません。だから何が起きても怖がる必要もありません。」
この様なことを、最初にインフォメーションします。
これを、改めてこの生徒に話しました。
何が起きてもここは大丈夫な場所である、と。
彼女は、この日初めてスラーでトライしました。
そして見事に音を外しました。
「どうだった?」
「外しました」
「でも、その時の音はどうだった?」
ドレミファと、ソまで繋がる音は、明らかに違っていました。
「僕には音がとても大きくなって聴こえたんだけど、みんなはどうだった?」
聴いていた仲間の友達も皆頷いています。
とてもよく響いていました。
しかも、外れたと言ってもかすれたわけではなく、ひっくり返ったような音でした。
「今までと違う吹き方をしたから、必ず違う音が出る。当然のこと。これを「外した」の一括りにすると、新し吹き方の練習にならない。違う結果が出てきたら、それは大いに褒めるべきことだよ」
そもそも彼女は、スラーでトライすることができたのです。
これだけでも『祝福』に値する素晴らしい事です。
「失敗なんてないの。全部経験」
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【エジソンの足元】
世界の発明王、トーマスエジソンが発明した白熱電球。
その足元には、何万個という割れた電球があるのです。
彼女は、その足元の割れた電球しか見ていなかったのです。
それに恐怖を抱いていた。
しかし、目的は電球を作る事。
そのために試行錯誤し、結果光らなかった電球が足元にあるだけ。
これは、実験と経験の証拠なのです。
見るのは失敗ではなく、音を出すためのする事。
彼女の場合は怖くなると、彼女だけでないですね、人は皆後ろに下がり体は下に縮みます。
「怖くなったらその反応は普通の事。そうなったら、意識的に前に動き周りを見よう。」
アレクサンダーテクニークがなぜこういう時に有効か、それは、意識的に恐怖や不安による緊張や固まりを取り除くことができるから。
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結局彼女は、高い音が出る吹き方をその場で見つける事ができました。
やったことはただ一つ。
失敗を認める事。
彼女から感想をいただいています。
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『私の中の不安や恐怖をとりだして、どうしたらいいか細かく、明確に教えていただき、自分に自信を持って吹こうと思えたし、前向きになれました。
これからは、失敗をこわがらずに、何度も何度も失敗を繰り返し、一番いいものを作っていきます』
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『不安を自信に変える』は私のレッスンテーマ。
この生徒にそれが起きたことは、とても嬉しい事です。
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