第207回 「~でもできる」から「~だからこそできる」へ

トロンボーン奏者でアレクサンダーテクニーク教師のかたさんです。

【高宮敏光さん】

さて皆さん、高宮敏光さんという方をご存知しょうか。

こちらが高宮さんです。

音楽家ではありません。
職業は学校の先生です。
でも音楽の先生でもありません。

この方は教師ですが剣士でもあります。

実は私かたさんは、中学まで剣道をしていました。
と言っても、やっていた期間はそれほど長くはなく、頸椎に異常があるらしく面を打たれると首に(今思えば環椎後頭関節トップジョイントだった)激痛が走り、そのため中一の時には退部してました。

それによりブラスバンド部に入り現在に至るわけですから、人生とは分からんもんです。

さて、話戻します。
自分がかつて剣道(居合も少々)していたことで、剣道や刀には興味が今でもあるのですが、そんな事もあり高宮さんのことを知りました。

剣道王国と呼ばれる九州は熊本県生まれで、県大会3位まで行った実力を持っています。
今も書きましたが、九州は剣道王国と呼ばれるほど剣道が盛んで、全国大会で勝つよりも九州で勝つ方が難しいと呼ばれています。
そんな中での県大会3位ですから、その実力の程がわかると思います。

しかし彼の特徴は、その実力だけではありません。

実は彼は、右腕の肘から先が無いのです。

そう、彼は隻腕の剣士なのです。

【隻腕の剣士】

高宮さん、実は1歳の時に腕を亡くしました。
ご両親が一瞬目を離したスキに脱穀機の中に腕を入れてしまい、右腕の肘から先を失ってしまったのです。

親としてはたまらんでしょうね。
自分たちの不注意で我が子の腕を無くしてしまったわけですから。

当然自身を責めたでしょう。
ところが当の高宮さんは「ないのが当たり前」と思っていたらしく、むしろそれで両親が心痛めたりしている方が辛かったそうです。

そんな優しい心を持つ高宮さんは、小学校で剣道を始めます。

剣道をしたことある人はわかると思いますが、竹刀と言うのは、真剣よりは軽いですが結構な重さがあります。

中学生でも重さ440g以上、高校生470g以上、大人では510g以上(男子)となっています。(全日本剣道連盟規定より)

しかも長さも1m以上あり、振り回すのは結構大変なのです。

しかも、高宮さんはそれを片腕でしなければなりません。

さらに、高宮さんは身長が158cm、体重50kgと小柄で、その体格で進学先の大阪教育大学の猛稽古に耐えていたそうです。

しかし彼はそこでレギュラーを勝ち取ります。

【負い目】

しかし、いくら頑張っても小柄で片腕というのはハンデとなり、大変なものは大変です。

彼はそこで、片腕というものを負い目に感じては両親に申し訳ない。
片腕でも勝てるところを見せるんだ、とがんばります。

しかし彼はやがて気が付きます。
片腕であることがハンデと思われないようにするために、片腕になってしまったことで両親に辛い思いをさせないために片腕でも何とかしようという思いそのものが負い目を感じていることなんだと。

片腕でもなんとでもなる、何でもできると思い込んでいたこと自体が自分を苦しめていたと言うことに。

これこそ、否定的プランだったわけです。

彼は考え方を変えます。
片腕だからこそできる事をしよう。

【片腕だからこそ】

彼の構えは、常套の中段ではなく上段です。
片腕なので左片手上段と言います。

彼の剣の特徴は、剣の長さを変えることができるという、一見あり得ないことができるのです。

どういうことかというと、上段時は左手で柄頭(竹刀持ち手の一番下)を持ち、近間や鍔迫り合いの時には鍔の方を持ちます。

[上段の時]

《左奥が高宮選手。柄頭を持っている》

[中段時]

《左奥が高宮選手。左手が鍔元を持っている》

剣の長さを変える事ができるのは、隻腕ならでは。
諸手でも片手にすることはあるのですが、多くは上段使いの人の人です。
これは、上段からの攻撃がより遠くの間合いの相手に打ち込むのに有利なためで、これを片手打ちと言います。

片腕の高宮さんにとっては、正に打って付けでしょう。

しかし、つばぜり合いや近間では、これは不利になります。
そこで彼が考えたのが、握る場所を変え間合いを変える事。これをすることで、間合いを自在に変える事ができるのです。

しかも、竹刀の握りが変わる事で竹刀の長さまで変わるので、相手にとっては未体験の間合いの取り方になります。
隻腕を武器にした彼だけの技です。

しかもその握りの変化はとてもすばやく、その瞬間に隙を見出そうとしていた相手選手が「見えなかった」というほどで、それに気を取らせることにも成功しています。

全日本学生選手権の時は、相手選手は身長差20cm、体重差50kgの巨漢剣士。
さらに延長戦なんと40分にまでなり、片腕ならではデメリットとして腕や握力の疲労がピークになり竹刀を落す反則まで取られます。

そこで彼の考た戦法は、左片手上段の構えのまま握りを近間用に変え、相手が打ち込んできたわずかな胴の隙に左片手抜き胴を放ち一本を取りました。

片腕ならではの技で勝利を勝ち取ったのです。

「こんなんでも、がんばっていけば出来るようになる」という思いは皆さんあるでしょう。
私もあります。

しかし、時としてそれに縛られてしまい苦痛を感じる時もあったのではないでしょうか。

それは、それでもできないと「努力が足りない」という思考になります。

そしてやがて「頑張ると言ってしまったからにはやらねばならない」みたいなことにもなってきて、苦しみの方が多くなります。

努力は大切ですが、同じことを繰り返すより違う方面から考え試してみることも努力と言えます。

高宮選手のように、一般的にハンデと言われているものを武器にすると言う発想は、正にそれです。

両腕のある選手はそれを使う技を磨くことに全力を尽くし、片腕ならばそれを有効に使う方法を編み出すのです。

人の生き方はそれぞれ。
辛いことを乗り越えるのも大事だけど、それを頑張るためのエネルギーを使いすぎると苦しくなります。

そんな時は「〇〇でも」→「〇〇だからこそ」と考えてみるとどうでしょう。
その方が、建設的で肯定的に、そして能動的に自分を使えそうですね。

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