第260回 新品楽器を鳴らせるまで、なぜ時間がかかるのか ~奏者とは妻の尻に敷かれる夫のようなもの~

トロンボーン奏者でアレクサンダーテクニーク教師のかたさんです。

以前に新しい楽器を買ったお話をしました。
購入後数週間ほど経ちましたが、楽器をよく鳴らせる状態にするにはまだまだ時間がかかります。
特にドイツの楽器はその傾向が強く、そこが扱いにくくもカワイイ楽器でもあるのですが。

【鳴らせるまで時間のかかる新品楽器】

さて、新品の楽器の鳴りが良くなるにはそれなりに時間がかかるものですが、それはいい意味でも悪い意味でも楽器に奏者のクセがないからです。

「素」なのです。
素の楽器に鳴りを持たせる(味を持たせる)には、やはりそれなりの時間がかかります。

これは、金属の分子レヴェルの配列が、その奏者の奏法によって変化していくとも言われています。
元NHK交響楽団首席奏者の神谷敏さんは、30年以上コーン社の楽器を吹いていました。
いわゆる「オールドコーン」と呼ばれる、あの時代の奏者たちが皆認めていた楽器です。
(ちなみに私はオールドのコーンのトロンボーンを吹いたことがあるのですが、私には吹きこなせませんでした)

その楽器には、30年かけて出来上がった神谷さん用にカスタマイズされた「味」があります。
私が長年使っていたThein(タイン)も、私の奏法の味や歴史が刻まれているのでしょう。

これは売りに出していますが、そういう意味では、新品より合う合わないが出てくるのかもしれませんね。
でもタインは本当にいい楽器なので、興味ある方はお申し付けください。
お試ししていただき、その良さを知っていただけたらと思います。

【扱いにくい】

さて話逸れましたが、今回新しく購入した楽器を吹いていると、あるところで操作のしにくさを感じました。
今までの楽器とは違うのでそれは当然なのですが、どこでそれを感じたかと言うと「スライド」です。

トロンボーン特有のこの部分は、メーカーによってポジションが微妙に変わります。
例えば、3番ポジションでもメーカによって位置や音の良く鳴るポイントが違うのです。
なので、腕を動かす距離感も微妙に変わります。

この辺りのことは、キーの位置やピストンの押し具合という面で現れるように、他の楽器でもあるでしょう。
ですから、今日書きたかったのはこのことではありません。
スライドのどのようなところで操作のしにくさを感じたかと言うと、

それは位置やポイントではなく「スライディング」、動きの方です。

【動きのクセ】

25年以上タインを吹いてきましたが、あの楽器には私のスライディングのクセがありました。
具体的にどのようなクセかと言うと明記は出来ませんが、私の腕の動かし方にスライドが順応していたのでしょう。

わかりやすく言うと、私のスライド操作する方向にスライドが曲がっていたようです。

スライドが曲がるというと動きが悪くなることと繋がりますが、そこまでひどい曲がり方ではなく、私の腕の動きの癖に合わせた曲がり方だったようです。

それは微妙なものでしょう。
楽器に合わせた動きを意識してはいましたが、楽器の方も機能を損なわない程度に私に合わせていてくれたようです。

ところが、新しい楽器はそれがありません。
むしろ私の腕の動かし方のクセの邪魔をします。
そして、前の楽器に比べスライド内菅と外管の間の遊びが少ないので、それも動きのクセを邪魔します。

新品の楽器は、製作者により緻密に構成され、丹精込めて作られた完璧な状態で出荷販売されます。
その一つ完成されたものと私の楽器を扱う動きと、それは時に相いれないこともあるのでしょう。

これは「自分に合わない」のではなく、今まで全く気が付かなかった自分の動きのクセを発見してくれました。
自分にはスライドの動きにクセがあったことを。

【すべてが繋がるのに時間がかかるから】

このクセは不具合を生むものでも、特殊過ぎて受け入れられないほどのものではありません。
しかし、新しい楽器には通用しない動きだったようです。¥
そして、新しい楽器にはスライドの曲がりはないので、せっかくいい状態のスライドを曲げてしまうのはもったいないですね。

なので、今新しい楽器によって自分のクセを再発見し、楽器に負担のかからないスライディングを研究中です。
それは自分自身の動きに対する探求に繋がります。

そして、これは連鎖的に起こることなのですが、一つ何かを変えると別の部分でもそれが現れます。
そうすると、それを研究し実践できるまでの練習が必要になる。
そしてまた新たな場所で変化が起きる、それの考察と実験、練習・・・。

そういったすべてのリンクを理解しようとすれば、おのずと時間はかかるものです。

だから、新しい楽器を鳴らすには時間がかかるのです。

しかし、楽器と言うのは自分用にカスタマイズする必要はあるとはいえ、その楽器固有の特徴を理解し愛情を持って接するとともに、時に楽器固有のワガママに自分を合わせていくことも必要のようです。

そういう意味では、奏者とは、時に楽器と言う奥さんの尻に敷かれる夫のようでもあります。

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